「八卦散手」(六十四路)は、清代光緒年間、宮廷侍衛であった董海川師の「絶手」であ
る。

 したがって、この技は伝統観念と秘密主義等によって、その正伝を伝える者は非常に
少なく、嫡系親族、或いは門下高足のみに伝えられた。このため流伝は広まらず、現在
では、すべてを明瞭に理解して演習できる者は、ごく僅かである。

 この「絶手」は董海川師より尹福師へ、尹福師は子息である尹玉璋師へと伝わり、私
達は尹玉璋師から、これらの技を伝えられた。

 尹玉璋師はかつて私達に「軽々しく他人に伝えるな」といってきかされた。私達は多年
ずっと師の教えを堅く守ってきた。

 現在、中国功夫は国の内外を問わず、広大に広まっており、武術界は空前の盛況を
呈し、世の人々の注目を深く受けている。したがって、これらの技を整理し、出版するこ
とは武術界に研究を提供し、また、世の人々に六十四路散手を推介し、中国功夫の発
揚に貢献することになる。

 「八卦散手」の内容は豊富で多彩であり、六十四路は毎路短く精悍で、動作も多く、方
法は多雑である。

 また、攻防は突出し、技撃性も強く、実用価値は大きい。武術訓練をする者を除いて、
警察官がこれを学んだ後に、制服対手や自衛環撃として、これをおこなうことができ、ま
た、普通一般人の日常の練習としては、身体や手足の機能の向上に努め、体質を増強
し、長年の病を取り除き、勇敢な精神、機知に富んだ技能を育成する。

 本書は、読者らが自分達で練習できるように、全書に三百余りの図解を特別に付け加
え、一招一式をできるだけ簡明にやさしく分かるように心がけた。

 本書を編纂中、私達は武術界の先輩方より、熱い支持と援助をいただいた。また本書
の絵図を描いて下さった陳淑娥女史に、共に感謝の意を表したい。

 編者は浅学非才であり、これに加えて資料収集の困難により、書中には誤りがあるか
もしれないが、ご容赦いただきたい。また、武術界の先輩方に再び多くの貴重なご意見
をいただきたい。


                                  1973年3月29日

                                          蒋浩泉 裴錫榮


 *この前言は台湾、華聯出版社刊、「八卦拳散手(六十四路)」、蒋浩泉、裴錫榮編著
に附されたものです。


トップへ
トップへ
戻る
戻る