〜手抄本〜



現在、筆者が翻訳・編集中の、趙玉祥老師著、「山西車氏形意拳譜」の原稿
先師王喜亮より趙玉祥老師に伝えられた拳理がまとめられている。



 「手抄本」とは、所謂「手書きの拳譜」である。

 先師から代々伝承された、唯一の「奥義の書」を授けられることは、武術を志す者なら
誰でも憧れることではないかと思われるが、手抄本は、中国武術においては、まさにこ
の「奥義の書」にあたるものである。

 現在では、手抄本をそのまま復刻したものもあるが、実は翻訳作業においては、これ
がなかなか難敵であり、かなりてこずらされるものである。

 なぜ、難敵なのか。それには次のような二つの理由が考えられる。

 理由の第一は、手抄本を著した人物の字が、あまりに達筆すぎて、文字の止め・はら
いが不明瞭で、その文字自体を判別できない

 その二は、一般に資料価値の高い手抄本の多くが著された時期は、中華民国時代の
ものが多いので、古典的な文章表現や、言いまわし、中国古典の背景、また我が国では
使用されない繁体字の理解に苦しめられる。

 しかし、難敵だからといって、手抄本を敬遠していては、話は始まらない。例えこれらの
理由があったとしても、手抄本には有り余る魅力があるのだ。

 筆者にとっての手抄本の魅力は、中国武術史上、名拳士と謳われた人物が、後世に
伝えようとしたものは何か、そのメッセージを受け、また、時を越えて先師の伝に触れら
れる機会を得ることができることである。

 もし、実物の手抄本を見る機会があれば、それは武術を志す者たちに何かを語りかけ
てくれるであろう。



単刀李こと李存義の拳譜「岳氏意拳五行精義」の復刻版


 さて、「翻訳のはじめ」に掲載した、「岳氏意拳五行精義」は、手抄本を復刻したもので
ある。

 これは、形意拳の名拳士である董秀升によって、もともとの李存義拳譜に解説を加え
られた。

 筆者が台湾の易宗門、潘岳老師のもとを訪れたときに、「尚氏形意拳、李文彬老師が
大切にされていたものの写しに、李文彬老師から、直筆サインと印をいただいたものだ」
と説明していただいたことを思い出す(先日、尚派さんから、ご指摘をいただきましたの
で、補足説明として、書き換えました)。

 筆者の手もとには、復刻版も含めて「岳氏意拳五行精義」・「河北派形意拳譜」そして
筆者の現在の師である趙玉祥老師から授けられた「山西形意拳譜」等の手抄本があ
る。ここで取り扱うのは「岳氏意拳五行精義」であり、現在筆者が翻訳に挑戦しているも
のである。

 手抄本を紐解いて、「李存義老師伯に学んだ董秀升が、後世に伝えようとした李師の
伝とは何か」、乞う!ご期待!!



趙玉祥老師秘蔵の河北派形意拳の拳譜
この手抄本の内容は、薛顛著「形意拳術講義」であるが、
一説によると張占魁の弟、張占華の系統のものともいわれている。


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