甲乙共に右交手式より、甲は右手首を翻し、乙の右手首をつかみ(採)、下方に、乙の
身体に右手がぴったりとつくように圧迫し、右掌の指を乙の右手首部につけ、乙の腰背 部にむけて押し出す(擠)。このとき、甲は同時に左掌で乙の右肘を支え(托)、前に向か って勁を発し、乙を推出する(図,23)。
乙は腰をやや左に転じ、甲の掌をこじ開け(こするように開く)、続いて右に腰を転じ、右
手首を翻転させて、甲の右手首を反対に掴み返して(採)圧迫し、左掌で甲の右肘部分を 支え(托)、甲と同様の方法を用いて発勁し、甲を推出する(図,24)。
要点・・・(1)甲の双掌による、前方に押し出す(按)発勁は、快速に短くおこなわなけれ
ばならず、採腕(手首を掴むこと)・按掌(双掌による発勁)・歩法・重心の下降は、協調一 致することが必要である。
(2)乙は甲の採や按を被った後、すぐさまに重心を後ろに移動させて座し、膝を屈し、
腰を転じて甲の掌を化し(受け流す、無力化する)、これから脱し、勢に順って反対に甲の 手首をつかみ(採)、前に推す(按)。これらの動作は協調し、連続しなければならず、上体 が上に仰いだり、或るいは粗野な力を用いるのを防止しなければならない。
甲は左掌を用い(虎口を前に向ける)、右に向かって乙の前腕を推開する(図,25)。
乙は甲が左掌で推そうとしてきたときに、すぐに左掌を用いて上から右、右から下、下
から左へと甲の左掌をたくし上げるようにして開き、同時に打ちはらう(図,25)。
甲乙双方均しく左足を進めて、左穿掌をおこない、双方の背中が互いに密着して擦れ
合うようにして通り過ぎ(図,26)、然る後に回身して右足を退き、左掌を出し、右交手式 となる(図,10)。
甲乙双方は、身体が密着し、擦れ合うようにして通り過ぎる前に、肘を用いて敵の背中
を打ってもよい。
また、敵が肘を用いて攻撃してきたなら、我は急速に右に腰を檸(←手偏)り、そして右
穿掌回身して右後方に向かって敵の陰部に反撃する。
要点・・・(3)甲の腕は、腰の前で乙の圧を被る前に、すぐさまに重心をやや後方に移
し、乙の掌を左掌でこするようにして開き、勢に順って乙の腕を推開する。これらの動作 は円滑に協調する。
(4)乙の楼(←手偏)掛(たくし上げるようにして打ちはらう)の動作は、大き過ぎとはなら
ないようにし、肘を軸となし、左にむかって楼(←手偏)掛する動作の基準をなす。
(5)本路の動作は、甲乙双方互いに腕をつかみ(採)、推す(按)。身体の重心は交互に
前に移し、続いて後ろに座す。これらの動作は、協調して一致する。
擦身交手もまた、眼法・身法・歩法の配合に注意しなければならず、動作を優美におこ
ない、精神を集中させること。
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